金曜日のCOMPASSです。
COMPASS熊本東のオープンから通ってきている5年生のお友達は、素直で、おとなしい印象でした。
そんなお友達が、実は先日、保護者様を通してお友達が作りたいと言っている「剣と盾」を「COMPASSで作っていただけませんか?」と依頼がありました。
殆ど初めてかもしれない、滅多にないお友達からの要望です。
そこで事業所で検討し、療育の課題として取り入れることにしました。
当然細かい作業があるため巧緻性の向上や、自立活動での指示を理解して自分で考え、自分から発信するという成果を期待して、実践的な支援として採用しました。
お友達が通い始めたのは5年前、小学校1年生のお正月が過ぎた頃でした。
発語が不明瞭で聞き取りづらく、体幹が弱く、体のバランスが不安定で、足取りもおぼつかない場面もあってよく転んでいました。
気持ちを表現できず、気持ちの切り替えがうまくいかない様子が見られました。
指示があれば従う姿勢は見られましたが、積極的に行動したり、要求することはありませんでした。
言葉も自発的な表出がなく、不明瞭さもあるので理解を得にくく、余暇の時間でも遊びの中で手を上げてしまうことがありました。
保護者様は「将来のことを考え、今できることを考えていきたい。」と、コミュニケーションや不器用さの改善、日常生活動作の確立などなど・・・たくさんの成長への願いを語っておられました。
少しずつ成長と共に変わっていった個別支援計画ですが、最新のものでは、迫ってきた将来の生活や就労に必要な言葉や行動、他者とのコミュニケーションの向上に向けたものとなっています。
この機会に「自分で考え、決めて、道筋を作ってゴールを目指す」という実践の場となるように願います。
まずはタブレットで見つけてきた盾や剣の写真を見ながら、自分で考えて必要な材料を書き出します。
COMPASSにあるもの、ないもの、代用できるものなどを考えていきました。
黒のビニールテープがなかったので、保護者様お願いし、社会勉強にもなりますねと快くご協力いただき、買い物体験も兼ねてお友達に準備してもらいました。
型紙は先生達で作りましたが、その通りに型を取り、線に沿って切る作業、テープを貼る作業は全てお友達が自分でやりました。
お友達は来所すると、通常通り課題を済ませ、その後にこの制作に取り組みます。
その後のお楽しみの活動をその日のスケジュールの最後に取り入れることで、学校の課題やCOMPASSの月例プリント、作業学習も意欲的に取り組んでいたそうです。
先生は、準備する道具(はさみ、のり、セロテープなど)や、必要な物は何?と問いかけ、お友達が自分で考えて行動できるよう導きました。
このとき声に出して確認できるように、できるだけお友達の発語を促し、また道具も先生に許可を得てから出してもらうように図り、貸し借りの言葉掛け「はさみを貸してください。」貸してもらえたら「ありがとうございます。」返すときは「ありがとうございました。」などの言葉使いや、渡し方などのやり取りの実践を挟み、上手にやり取りができると褒めてもらえ「頑張ってね!」と励ましてもらえました。
こうして成功体験を積み重ねることで、学習への意欲向上と他者とのコミュニケーションにも自信を持てるよう支援していきました。
今回の製作だけにとどまらず、お友達の5年間の学習の成果も現れ、タブレットで文字入力もできるようになり、まだ完全な文章になっていない部分もありますが、日記も書けるようになりました。
もちろん、今は遊びでトラブルもなくなり、手の出るようなことは見られなくなっています。
最近では生活面でのスキルを上げたいという要望もあったそうです。
それは、バスや電車などの公共交通機関で移動ができるようになりたいというお友達の願いと、学校から家まで一人でバスに乗って通学出来るようになって欲しいという保護者様からの願いが一致し、COMPASSでも療育場面での取り組みをスタートさせています。
それはこのプレートを作り、学校から自宅までのバス停の名前と読み方を覚えることです。
地名ならではの難しい読みや名称がたくさんあるのですが、この漢字の読みのマッチングを頑張っていて、だいぶ読めるようになっています。
「ロトの剣と盾」が完成したその日、お友達は見たこともないような誇らしい表情を見せ、集団活動で皆の前で作品を見せて堂々と発表し、拍手喝采に包まれていました。
自分からやりたいと申し出たことを自分一人で最後までやり遂げることの意味は、とても大きいものでした。
それ以降、まだ促しが必要な場面もありますが、自分から積極的に準備する様子が見られるようになってきています。
先生達は、いつも消極的だったお友達が、自分で好きなことを見つけ出し、作りたいと強い気持ちを発信したことにまず驚きました。
そして最後まで頑張って作り上げ、達成感から自信がついたのか、逞しく成長した姿にまた驚かされています。
これまでの5年があっという間だったように、社会へ旅立つ日もきっとあっという間にやってくるでしょう。
今後も引き続き将来の就労を見据えた支援を続け、コミュニケーションの上達を目指し、困ったときに助けを求められるよう、その手段と方法、就労に向けたやりとりに取り組んでいきます。
小さい頃のイメージがあって、そんな日が来るとはとても信じられない思いですが、先生達の想像を軽く飛び越えて、お友達はひとりで電車に乗り、買い物に行き、お金の計算もできて、お店の人に「ありがとうございました。」と言って笑顔で帰ってくることでしょう。
その日を目指して、皆が見守る中、しっかりしたお友達の足取りは、前へ、前へと進んでいきます。
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