COMPASS新下関駅前 気づきを得るために(1)

水曜日のCOMPASSです。
COMPASS新下関駅前のお友達が通い始めたのは、昨年2月、就学を目前に控えた頃でした。
保護者様のお困りごとは「素直に聞いてくれない」こと。
そのために様々なトラブルに繋がってしまうことを心配しておられました。
心を穏やかに、落ち着いて行動してほしいというお困りごとの解消と同時に、安定した楽しい学校生活を送れて、できることや好きなことが増えて可能性を広げてほしいと願っておられました。

COMPASSの支援計画では、気持ちの切り替えがスムーズにできるようになること、楽しく学習できることを目標としましたが、それ以前の課題として信頼関係の構築が急務でした。
就学2ヶ月前から始まったお友達との活動で、COMPASSの先生が一番初めにぶつかったのは、お友達の「行きたくない!」でした。

この行き渋りは就学後も続き、学校へ迎えに行っても素直に応じてくれず、泣いたり、その場に座りこんで動こうとしません。
来れたら来れたで今度は帰るのを嫌がり、送迎車に乗るのを拒否し、乗ってもシートベルトを締めようとしませんでした。

やっと1年生になろうかという時期のお友達、この場所が何で、何に役立つのかなど、説明してもお友達の心での理解は難しいと思われます。
それに子どもは「本当はこうしたほうがいいんだろうな」とわかっていても、大人には素直に従いたくなかったり、自分の感情をコントロールできなかったりするのは珍しいことではなく、頻繁に見られる光景です。
実は正解を知っていて、それでも正しく行動できないという、ふわふわした感覚でいる子どもに対して「〇〇しなさい!」「ダメ!」と言った言葉をぶつけても反発しか覚えません。
声を荒げると、一生子どもの心に残るのは「怒られた」「不快だった」ということだけです。
大きな声や強制的な声かけで渋々従う場合は、怒られたくないからとりあえず言うことを聞くのであって、納得して自主的に行動するのではありません。

この頃はまだお友達と先生の間に信頼関係があるはずもなく、ポジショニングが確立できていない状態です。
初めの頃、どこまでが許される行動か…、子どもたちはよく先生を試します。
それがどんな反抗的な言動であっても、無視という表現であっても、先生はお友達の態度を承認こそしませんが、今はそんな気分なのだと冷静に受け止め、優しく静かに、かつ毅然とした態度で今すべきことを諭すだけです。
お友達がどんな態度を取っても、決して感情的になることなく、そのままの気持ちを受けとめてくれる相手には、子どもは次第に信頼感や尊敬の気持ちを持つようになります。

とはいえ、しばらくはお友達の抵抗と向き合う日々は続きます。
送迎を乗り越えて来所しても、着座姿勢を保てず、先生の話を聞かず、嫌なことがあると机の下に潜ります。
皆と一緒の活動ができず、目の前のプリントも完全無視で頑なに取り掛かろうとすらしません。
取り組めば効果が得られると確信している「静かタイム」も一向にできませんでした。

そこで学習では、まずは座って何かをするという体験に焦点を当て、プリントを拒否されたとしても、お友達が好む「ぬりえ」「しりとり」や、得意な「足し算」などを手始めに、ときには折り紙やお絵かき等も取り入れながら、何らかの「書く」行動での目に見える成果を体験することから始めました。
課題終わりの強化子として、お友達の好きな工作がいつでもできるように、毎月季節に応じた制作ができるように段ボールや廃材を準備することを忘れませんでした。
気が乗らない様子を見せたときには強引な誘い方をせず、寄り添い、最低限の適切な声かけをするにとどめ、どうすべきか自分で気づきを得て、自分で判断できるように気持ちの切り替わりを待ちました。

送迎車に乗らない、シートベルトをしないなど送迎時に見せる反抗的な態度でも、冷静な態度で諭し、多くを語らず、お友達自身が気づくことを大切にしました。
無理に車に乗せようとせず話をしたり、一緒に貝殻を拾ったりしながらお友達の気づきを待ちました。
開始から5ヶ月目の7月、たくさん寄り道をしながら、いつ辿り着くかわからない道を進んできたお友達との歩みですが、ここへきて表情も明るくなり、顔を見合わせて笑顔を交わすようになってきました。
(後編へ続きます)

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