水曜日のCOMPASSです。
系列の事業所から移動し、小学校3年生のお友達が大村Linkに通い始めたのは、今年のお正月が明けた頃からでした。
苛立つと突然大声を出したり、机上に登ったり、壁を叩いたりと激しい行動をしてしまう傾向がありました。
着座姿勢で集中した取り組みができず、頻繁に離席して走り回っていました。
保護者様は「自分の気持ちを言葉でしっかり伝えられるようになり、もっと楽しくコミュニケーションが取れるようになって欲しい。自分の思いどおりにならなくても大声を出さずにいられるようになって欲しい。」と困りごとの解決を強く願っておられました
個別支援計画では、まずは環境の変化に慣れ、どんな条件下でも自分をしっかりと保てるようになることを目標とし、また、思い通りにならなかったときでも、気持ちを切り替えられるようになり、大きな声を出さずに我慢できるようになることを目指していくことにしました。
実は以前から、学校でも保護者様が心配しておられた困った言動が繰りかえされていたのだそうです。
この困りごとの改善を目指して、保護者様と学校の先生とドクターで何度も話し合いを持たれました。
その結果、常用している薬の服薬量を増やすことも試して様子を診る経過観察を行なったのだそうです。
COMPASSでも保護者様としっかり話し合い、COMPASSはここでしかできない取り組みを考察します。
例えばお友達が離席するたびに、周りのお友達の行動と、自分のやっていることの違いを認識させて、お友達がしっかりと状況を認識できるように促し、お友達自身が皆と違う行動をしたと認めたときには、では、お友達はどうすればよかったのか?を丁寧に説明していきました。
また、お友達が苛立って大声を出したときには、先生もまた同じくらい大声をあげ、自分の声量がどんな風に周りに迷惑を与えているのかを実感してもらうことにしました。
壁を叩くという危ない行動をしたときは、怪我を負う危険性や、乱暴することで壁が壊れてしまうかもしれない可能性について、しっかり理解できるよう、ジェスチャーも交えながらしっかりと話して聞かせました。
他にもいろいろな方法を試しましたが、なかなか改善が見られず、日数が経過するばかりでした。
それまで回答や要求といった自発的な発語がほぼ見られなかったお友達ですが、ある時期からコマーシャルのキャッチコピーや、誰かのものまねといった、同じフレーズを繰り返す場面をよく目にするようになります。
話すと言う印象のなかったお友達が好んで発信していたのは、これらの決まったフレーズだけだったことから「気に入った言葉や、いつも同じフレーズを発言するのは、お友達にとって心地よいことなのかもしれない…。」と考えるに至りました。
COMPASSでは、おやつの時間にはリーダー役が「いただきます。」と「ごちそうさまでした。」というシーンの挨拶を行い、「帰りの会」では進行役が帰るチーム分けとその車の運転担当の先生を発表する役割を「やってみない?」と打診してみることにしました。
すると、いつもは発言しないお友達が意外にもあっさりと「いいよ!」と引き受けてくれたのだそうです
それ以来、号令をかけるリーダー役はお友達の役割として、毎回立派に務めるようになりました。
この役割を与えたことは、想像以上にお友達から良い結果を引き出すことになります。
以前のように落ち着かない言動を見せたとき、先生はお友達を嗜めるのですが「そんなことを言うなら、帰りの会を他のお友達にお願いしようかな…」と伝えてみると、お友達はすぐに謝り「もうしません!ちゃんと話をします!!約束を守ります!」と言って問題行動を止めるようになったのだそうです。
何度か困りごとが現れるたびに、そのやりとりを繰り返し、そのうちに問題行動はほとんど見られなくなっていったのだそうです。
子育ても、療育も、何が正しくて理想的か、一概に言えません。
仮に理想とする働きかけをしても、全ての児童に一定の成長が認められるかは確信が持てません。
今回、与えた役割を維持したいお友達の心理に働きかけて困りごとの解消を図ると言う構図も、本当に正しかったのかはなんとも言えません。
ただ、お友達には効果があり、この時の事業所の取り組みと結果について学校の先生とも情報を共有し、検討していただき、学校でも日直などの役割の際に活用していただいたところ、明らかに変化が現れたとのことでした。
今後も保護者様と学校とは、さまざまな場面で継続した情報共有を図っていきます。
何はともあれ、この取り組みはお友達の行動にかなり大きな変化をもたらすきっかけとなったようです。
お気に入りの言葉を皆の前で発する機会があること、また、おやつの号令も帰りの会の発表にも、COMPASSのお友達皆が従ってくれることで、大きな満足感を得られていると考えられます。
その結果、お友達がこれまで自分から参加することのなかった壁面製作などの集団行動にも、積極的に参加するなど、相乗効果をも生みだしています。
リーダー役も、実はすぐ飽きてしまわないだろうかと心配していたのですが、それも杞憂に終わったようで、今も継続しているお友達には、リーダー役の経験から責任感も芽生え始めたようです。
(後編へ続きます)
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