COMPASSオレンジ 心から言葉を引き出す(1)

水曜日のCOMPASSです。
COMPASSオレンジにまだ2歳だったお友達が通い始めてから4年と半年になります。
利用開始時には視線が合わず、発語は物や絵を見て単語を発声することだけはありました。
相手の話を聞いているように見えましたが、何か尋ねても質問に答えられず、「はい」「いいえ」の意思表示はなくオウム返しでした。

お友達はご両親を「パパ」「ママ」と呼ぶこともなかったそうです。
保護者様は、お友達と楽しく話ができるようになりたいと願われ、会話が上達して自分の状況や気持ちを言葉で伝えられるようになり、お友達と関われるようになってほしいと希望しておられました。

個別支援計画では、COMPASSでの活動に慣れていきながら、徐々に身の回りの物に関心を持ち、言葉を増やしていくことを目指しました。
ご両親の「パパ」「ママ」をはじめとした身近な人のことを呼べるようになり、手遊び歌、絵本、ままごとなどの活動を通してみんなで楽しく過ごせるように促していきます。
言葉を軸にして成長を促すために、当時2歳のお友達との活動には、絵本、絵カード、歌や手遊び歌、積み木や様々な素材の教材を通した色認知などの活動を採用しました。

こうしてお友達のCOMPASSの日々がスタートします。
まずは物を介して「ちょうだい」「どうぞ」「ありがとう」のやり取りの練習を積み重ねていきました。
他にもカード等を並べ、「〇〇取って」の指示を理解して、自分で選ぶよう導いていきました。
絵本を読み聞かせたり、一緒に遊ぶなど、あらゆる機会を作りながらたくさんの言葉を掛け、単語や動詞などの語彙を増やすための環境づくりを心がけました。

当時まだ2歳の幼いお友達です。
長い時間取り組んだり、集中したり、指示の意味を深く理解することが難しいのは当然でした。
特にCOMPASSに通い始めたばかりの頃は注意力が散漫で、周りが気になっているときは特に先生の声掛けが届きにくいようでした。
そんなとき、先生はお友達の肩を優しく叩き、「ねえ⚪︎⚪︎ちゃん!」と名前を呼んで意識を向けられるよう導いていきました。
集中が継続するように、お友達の興味のある教材を用いて集中力を保てるように心がけました。

先生がお友達に質問しても、お友達からはオウム返しが続きました。
オウム返しは「エコラリア」とも呼ばれ、質問への応答として相手の質問の一部やそのままの言葉を使うという状態です。
それがお友達のクセだったり、回答がわからないからというだけでなく、ある説によれば、これは周囲の言葉や行動を模倣することで社会的なルールやコミュニケーションの基本を学んでいる行動だそうで、会話につながる学習プロセスなのだとか。
オウム返しは、相手の言葉を繰り返すことで会話を継続させようとしている人との関わりの初期段階と考えられます。

自分自身の感情の表現が難しいお友達の場合、相手の感情も同時に理解できないという場合があり、言葉の意味がわかっていなくても、同じ言葉を言うことでコミュニケーションを図ろうとしているのだそうです。
オウム返しは特殊な症状などではなく、コミュニケーションの成長過程の第1歩=”ステージ0”だと考えると、取り組み方で改善に導けるはずです。
先生はオウム返しが返ってくると「これなあに?、〇〇だね」等、質問と答えをセットにして話しかけるように試みました。
「これなあに?、〇〇だね」をセットで聞くことで質問に「答える」ことを自然に学べるように会話につながるの環境を整えていきます。

生活動作の手順などを先生が教えようとすると、お友達は自分やる!と言いたげに、手助けを嫌がって怒りはじめます。
それでもやはりぎこちなさが認められたので、巧緻性訓練に取り組み、指先の使い方を練習し、自分で出来ることを増やしていきました。
巧緻性の訓練は根気が要りますが、楽しく続くように心がけ、お友達がしっかり出来たとき、先生は沢山褒めることを忘れませんでした。

また、作業中や座学でも気持ちの切り替えが難しく、思い通りにならないと泣いてしまうお友達。
そこで、お友達が納得して切り替えられるように、活動予定や終わりの時間などをあらかじめ伝えるようにして、スムーズな切り替えを促していきました。
こうして長い期間、繰り返し、繰り返し定着を目指した活動を継続しながら、少しずつ見せる成長の兆しを足がかりに学びを進めていきました。
やがて、利用開始から2年半が経過した昨年、令和5年5月くらいからキラッと光る変化が訪れます。
(後編に続きます)

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