水曜日のCOMPASSです。
昨年の夏休みに入った頃からCOMPASS大村Linkに通い始めたのは、とても繊細な高校2年生のお友達です。
保護者様から受けたご相談は、今何ができないから将来こうなって欲しいというものではなく、お友達がここに至る経緯からでした。
中学生になったとき、お友達は先生に将来の自分の姿に夢を相談します。
数学や社会科が好きだったので、将来、社会科の先生になりたいと話すお友達に、先生はお友達の夢を受け止めて理解するどころか、大学への進学も必須だし、無理だろうと一蹴されたのだそうです。
そればかりか、お姉さんが所属していた吹奏楽部に入りたいと希望したお友達でしたが、これもまた先生の意見で断念することに。
先生の言い分にもそれなりに根拠があり、先生目線で将来を考えてのことだったのかも知れませんが、これらのできごとでお友達の心はひどく傷つきました。
将来の夢を完全否定されたこと、それはお友達がふんわりと想像した明るい未来を打ち砕き、吹奏楽部でやりたかったことまで制限された辛さはお友達の自己肯定感を否定するものでした。
それでもお友達は自立しようとする意思を糧に努力しましたが、逆に精一杯頑張ろうとする気持ちがプレッシャーとなってしまったり、誰も頼れないと思い悩むようにもったりと、精神的に敏感になって非常に辛い中学生時代を送ってきました。
そんな経験から、進学先の選択には保護者様の思い、在校中の先輩達の話を聞いたりして、ゆっくりと過ごせそうな現在の高校を選択したそうです。
中学時代に刺さった棘は深く、まだ傷も癒えておらず、繊細なお友達は悩みごとや不安感などに囚われやすい状態が継続していて、誰かと話したい様子を見せていました。
現在高校2年生のお友達、そろそろ社会に飛び立つ準備が視野に入ってくる頃です。
保護者様は、お友達が将来的に一般就労ができるようになり、一人で生活できるようになってもらいたいと考えておられ、そのためにも将来に向けて対人関係に必要なコミュニケーション力の向上と自立心を高めて欲しいと願っておられました。
COMPASSの立案した個別支援計画では、まずCOMPASSに通うことに慣れ、たくさんの人と親しく交流し、その経験の中で自分の考えていることや思ったことを話せるようになると言う目標からスタートしました。
この目標に向かって活動を続けながら、並行して今一度生活リズムを整え、情緒の安定を確保し、自立心を養うためにもいろいろな新しいことにも挑戦していくことを目指していきます。
こうしてお友達の利用が始まりました。
利用開始当所のお友達は、皆の中に入っていけず集団活動はもちろんのこと、周りのお友達と関わる様子は見られませんでした。
話しかけられて会話が始まっても断片的で会話が続かなかったり、コミュニケーションが取れないようで、ぽつんと寂しそうな様子だったと言います。
熟慮のうえ選択した高校でしたが、実はお友達にとってはプレッシャーを感じる日々が続いていました。
学習内容や学校生活、日々の行動に至るまで、中学時代よりもリラックスできる環境だと実感していたお友達。
ところが、反面、中学時代にはなかった違う種類の悩みに直面してしまいます。
高校では「できないだろう」と言われていた中学とは真逆に、先生方からは「もっとやれるだろう」と期待される言葉が重石となっていました。
また学級委員長に選任されたことで、クラスをまとめてなくてはという強い使命感の重圧で息苦しさを感じていたお友達。
さらに学級委員になったことでクラスのお友達からの妬みつらみも感じるようになり、先生の期待と同級生の感情、この両方からの圧力に挟まれて、息が詰まりそうになるくらいの孤独感を覚えている状態だったと言います。
お友達が通い始めた時期は進学してから3ヶ月ほど経った夏休みでした。
COMPASSでは、お友達や保護者様からこれまでの経緯をじっくりとお聞きしたうえで、方針について会議を開き、全員で意見を出し合い、お友達にとってよりよい方法は何か?と議論・検討を重ねました。
これほどまでにナイーブで繊細なお友達のようなケースは、事業所にとって初めてだったこともあり、手探りの毎日が始まります。
そこで先生たちが選択したのは、特別なカリキュラムやプログラムはなく、毎日たくさん話を聞いてあげるということでした。
学校のことや家庭での過ごし方だけでなく、お友達が好きな曲や楽しいと感じる嗜好性など、どんな小さなことも話題にして、会話を増やしていきました。
しばらくすると、療育中のみならず送迎車でも先生の話題に応じたり、自分から話し始めたりするようになっていきました。
そんな何気ない会話がこれまでお友達が知っている「先生」と違い、「落ち着きを感じ、なんだか明るい気分になっていくように感じています。」と、お友達から言ってくれたのだそうです。
自分の意見を言わず、「ひと言も漏らさず全部聞く」という姿勢の継続で、お友達が抱える日頃の悩みやうっぷんまですべて吐き出し、少しでも来所後に気持ちが洗われ、前向きになれる状態になって帰宅してもらえるように全員が意識して対応していきました。
これはほとんどカウンセリングの傾聴するというものに近いのですが、不安定な気持ちを抱えるお友達にとって、やはり心の支えになる場所や人の存在は大きく、重要な要因だと考えられます。
通い始めて3ヶ月が過ぎた頃から訪れた変化は、お友達自身が変わったというよりも、お友達を取り巻く周囲の様子の変化からでした。
(後編へ続きます)
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