土曜日のCOMPASSです。
今日ご紹介するお友達は、COMPASS諫早のオープン時から通っている高校1年生の男子です。
それまでにも放課後等デイサービスの利用経験はあるものの、長く通ったことはなかったそうです。
そのお友達の1番の困りごとは「コミュニケーション」。
字を読んだり書いたりするのは自分のペースで行えるのですが、我が子の声を、もう何年もお家の方も聞いたことがなかったと言います。
話せないわけではなく、蚊の鳴くような小さな声で「・・・・」といった具合なので、会話の相手は「え?、今なんて言ったの?」と聞き返されてしまう。
何度も何度もそういうことがあり、やがて一言も話せなくなって行きました。
これまでそんな辛い思いや、傷つけられた経験をたくさんしてきたお友達ですから、最初は週に3回。
やっとの思いでCOMPASSにも通ってきていました。
10月
手探りで始まったお友達のCOMPASS。
先生は、他のお友達と関わらない環境の個室でその子に合った課題を一緒に取り組むことから始めました。
お友達との意思疎通の手段は全て筆記だけで、言葉はおろか、声を聞くこともやはりありませんでした。
指導中も、決して先生の顔を見ようとはしません。
たまに目が合っても、お友達はすぐに目をそらしてしまいます。
11月
本読みの練習でも、先生が1行読み、次の行はそのお友達の読む番ですが、文章を指で追って、口は動いていますが黙読です。
実際2ヶ月間は、集団活動はおろか、レクリエーションに参加する様子も見られませんでした。
COMPASSに来て、個室の沈黙の中で過ごし、帰宅するという日々が続きます。
それでも先生は辛抱強くお友達の羽化を信じて待っていました。
12月
イベントで生け花の体験を行う機会がありました。
並べられた花々を見て、そのお友達は珍しく「やりたい」と意思表示を見せました。
みんなと一緒の空間で、みんなと同じように先生の手を借りながら生け花に取り組みます。
「お花、好きなの?」と尋ねるとうなづくお友達。
「ここはこう、こうやってね。」と先生が手を添えても嫌がることはなく、素敵な作品が完成しました。
「綺麗だね!」という話しかけに、お友達はうなづいて笑顔を見せたと言います。
それから、少しずつCOMPASSの先生とも、お友達とも少しずつ心を通わせる様子が見られてきました。
一役買ってくれたのがCOMPASSの小さなお友達。
児童のお友達は、休み時間となると、もうお構い無しに高校生のお友達に近寄り、話しかけてきます。
行き帰りの送迎車の中でも、黙って聞いてくれる優しいお兄ちゃんができたとばかりに、ずっとおしゃべりが続きます。
そんな光景がだんだん当たり前のようになってきました。
1月
保護者の方から本人の強い希望でCOMPASSに毎日通いたいと申し出を受けました。
保護者の方はこれまで放デイは続いたこともなかったし、まして毎日行きたいだなんて、とても驚いたとおっしゃっていました。
それからは先生が判断し、もう個室での指導をやめ、たくさんのお友達で賑やかなホールでの学習に切り替えました。
ですが、衝立でお友達が安心できよう配慮はしてあります。
ここから一気にお友達の笑顔が増えてきました。
そして、
奇跡は突然やってきました。
月末に学校行事で「職場見学会」の会社へお邪魔したときのこと。
会社の方に、学生たちが一人一人自己紹介をする中で、次は彼の番・・・。
そこで、お友達ははっきりと、
「僕は、〇〇〇〇です。よろしくお願いします。」
と挨拶をしたというのです。
引率した先生も、同級生も、誰もが目を、耳を疑いました。
何しろ入学以来、初めて彼の声を聞いたのです。
それがこんな立派に挨拶ができ、よろしくお願いしますとまで言えたなんて・・・!
この日、数名のお友達とは話をしている姿も見られたと言います。
挨拶はCOMPASSの基本で、毎日どの子も来所時、退所時には必ず行うものになっています。
それをきっと毎日毎日お友達は見てくれていたのでしょう。
興奮冷めやらぬ学校の先生からも、保護者の方からもとても驚きと感謝の言葉をいただき、COMPASSの先生も込み上げるものを抑えることができませんでした。
どのお友達も変わりたいと思っているはずです。
私たちはそんなお友達の伴走者となって、信じて寄り添い、支え、共に未来を目指します。
自分の力で、一つ殻を破ったお友達。
その瞳には、今どんな新しい景色が写っているのでしょうか。
COMPASS発達支援センター諫早
所在地:〒854-0041
長崎県諌早市船越町891ー2
連絡先:0957-56-9328
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