NO168.時短は、いかん

ご飯が早く炊ける方法、洗濯が早く出来る方法、手間をかけず時間を短く事を成し遂げる事がもてはやされておりますが、療育支援に関しこの考え方は捨ててしまって下さい。

スピードが問われる現在社会です。

早く走る車、新幹線、一分、一秒争っている時代で、何でも短時間で成功する事が評価されています。でも実は多くの大切な事には全て時間が必要なのです。

子どもを授かっても医療技術が整っている現在でも順調な生育までには10カ月かかります。果物が生育し、実をつけるようになるのにも桃栗3年、柿8年と申します。私の父は一時、錦鯉にはまっておりましたが、産卵から立派な鯉に成長するまでにはやはり何年もの月日が必要です。

皆様のお子様も上記と同様に生き物です。成長に時短はないのです。療育支援も同様です。〇〇をしたからと時間を短縮して結果を得る事は出来ないのです。

電子レンジでチンではないのです。

物事には時間の熟成が必要な物がいっぱいあるのです。味噌も醤油も、古酒もワインも時間が必要なのです。

全ての経済活動は、生産効率で考えるせいか、短時間で利益が出る事がとても素晴らしいように考えられがちですが、療育支援に関して本当の答えはそこにあるのではないのです。

植物を育てるとよくわかりますが、毎日水やりをしていてその成長ぶりがどれ程が確認出来ない事は一杯あります。種を植えても芽が出てこなければ直ぐに諦めたり、飽きてしまう人がおりますが、芽を出す前に、実は地中でしっかりと根をはって発芽の準備をおこなっているのです。ニョキッと芽がでて、雙葉を付けて、茎が伸びて、つぼみを付けて花が咲くのは楽しく嬉しいのですが、途中の成長を視認するのはよくよく観察しなければかなり困難です。

私共の施設では言語習得や、多動行動を抑える為の支援希望者が多いのですが、お子様の状態にもよるのですが、すぐに芽が出るとは限りません。口の開け方、呼吸の仕方、姿勢の保ち方、口蓋や表情筋の筋力アップ、歯並びの去勢等ほかにもいろいろありますが、植物が根をはるような成長への下地の整備が必要です。

時間がかかるのです。

ちょっと指導したからすぐに結果が出るわけではないのです。

時間短縮ではいかん(駄目)のです。

じっくりと時間を掛けて育成する事により得られる能力も沢山あるのです。

毎日繰り返し、繰り返し支援してあげて下さい。

人間の成長は斜め45度の成長線をえがくのではなく、突然跳ね上がる半放物線を描きます。英語のJに似ているからJカーブと呼ばれます。

本来は貿易収支と時間経過に関しての曲線なのですが、一度力を注いだ時、一旦その時点よりも悪くなってしまってから、突如上昇曲線を描く様子をさします。

運動を始めた時最初は、筋肉痛等で力は減衰しますが、筋肉痛がおさまり、筋肉がみについてくると、爆発的な力を発揮する事が出来るようになるのです。

ダイエットをしようとして、走ってみたが、体重は減るどころか筋肉がついてしまって逆に体重が増えるのですが、一定の時期を過ぎた段階から体重が落ち始めるというとご理解して頂き易いかとも思います。

療育支援も多くの場合はこのJカーブを刻みます。

どうぞ性急に結果を求めないで下さい。

療育の結果は薄紙を重ねる努力で突如発現します。

時短はいかんのです。