NO159.指導体系に関する考察

指導の形態には、1対1の個別指導から、少数指導そして集団での一斉指導に大別されます。国内に現存する療育施設での指導はその殆どが一斉指導が中心であると言えると思います。また個別の指導であっても、1ヶ月に1回とか継続性に乏しく成果を得られにくいという問題があるのもまた現実も問題と考えております。

私共は、個別連日療育指導と、少数指導、集団での一斉指導と子ども達の状態に合わせて適時変更しており、それぞれの優位性を最大限に活かした指導方法を導入しております。個別には個別の優位性、少数には少数なりの良い面と悪い面があるのです。これは一斉指導も同様で薬にも毒にもなってしまいます。

子ども達から離れて、一般の学習指導で置き換えて考えて頂くと理解しやすいのですが、中学2年生レベルの英語のクラスに、アルファベットすら覚えていないお友達Aさんを加えると、Aさんに手をとられ、全体の指導が不十分になってしまいます。授業進度も遅くなり、向学心が高ければ高いほど全体に不満が起こります。Aさんも自信を喪失し、勉強嫌いになり本来の向学心の芽を枯らせてしまう事となります。Aさんに合わせて、指導スピードを落とすと、全体の中から下に流される下位レベルを生む事にもつながります。双方に不満とストレスが溜まる状態となってしまいます。

本来上記の場合であれば、Aさんは、個別で指導を受け、全体のレベルに近づくまで、せめて指導内容の半分は理解できるまで待ってからクラスに入るべきなのです。理想的にはそのレベルは出来るだけ高く熟成するまで個別で指導を受ければAさんもクラスも共に成長させる事ができるであろうとご推察頂けるのではないかと思います。

1つの課題をその子のレベルに合わせて指導出来るのが個別指導です。これが最大の利点であり指導者はそれを理解しなければなりません。しかし個別指導では競争心は養えません。集団でのルール、社会認知性を育むのは困難で、個人指導の限界が出てしまいます。ですから私達は個別指導だけではなく、集団指導を併用する必要性があるのです。

一般の学習塾では20年前から個別指導が徐々に主流となってきましたが、これは個の力をピンポイントで指導する事を多くの保護者や子ども達が求めた結果にほかなりません。

しかし個別の指導であるため人件費がかかり指導費用がどうしても高額になってしまうという難点もあります。人でがかかるのです。この点を克服しなければ個別療育は困難を極めます。

少数指導は個別指導で躓きを一蹴出来ない時に効果的なのです。同じくらいの年齢や、力量が望ましいのですが、Aさんが出来ない事が、Bさんは、出来る。Aさんは、Bさんだって出来るのだから自分も出来るという達成欲求を持つことが出来ます。互いが出来ない時、Aさんが先に出来るようになると、諦めていたBさんが奮起し頑張る事が出来るようになるのです。指導者の力量にも関わりますが、適切な指導が出来れば、子ども達を良い方へ誘導させる事が出来るのです。

共に励まし合い頑張る力が得られるのが少数指導の優れた点です。大人数の全体指導よりも小回りが利きますし、個別に近い指導も不可能ではありません。主任指導者と副がつけば、個別、少数の双方の利点最大限に活かす事も可能なのです。

少数指導は2名から3名までが理想です。それは恐怖の2:6:2の法則に嵌らず指導する事ができるからです。

2:6:2の法則を簡単に説明すると100名の生徒がいると20名が成績上位者、60名が中庸者 残りの20名が下位層にセグメント(分別)されてしまうという会社や組織論でも実証されている法則です。

 不思議な事に、スポーツや、様々な諸活動に適応され、生物学的にも多くの実証例が検証されている法則です。より身近な事例として、実際の30人クラスで例示します。

 30名クラスであれば、20%の6名の生徒がクラスをリードする成績優秀者となります。
中堅層の18名はその場のムードで上に流れたり、下に流されたりと浮遊し安定しません。 中位層は、指導者によって優劣をわけてしまいますが、通常では、トップ層にも下位層にも入れません。そして残りの6人は、ミスが多く、やる気もなくなり、諸所の問題が頻発しやすいグループとなります。一見、子供達の姿は同じように見えても、例外として逃れる事は非常に難しくなります。
 
構成人数を意図的に変えない限り大きな変容は起こりえません。

通常の会社で考えますと、20名規模の営業部門で考えれば、リーダーが4名 それに引っ張られる中位層12名 戦力外対象者4名となります。戦力外対象者4名を配置転換して16名の部門にるすと全体の2%にあたる3名が戦力外適合者へと堕落してしまいます。 不思議ですが、必ず起こる現象です。

 また、何かの作用で、前の20名の組織が分断され、トップの4名と戦力外適合者がグループから外されると、残った12人は中庸な社員であったにも関わらず、この中で、20%の2から3人がトップ社員に変身します。

スポーツで、看板選手が抜けたあと、新しい選手が育ってくるのと同じ現象です。また、真面目だった人の中から2名から3名がやる気を失い戦力外適合者へと転落していきます。

 過去のご経験を思い起こして頂くとすれば、小グループでの変容があげられます。
頭のよい仲良し5組で図書館行って勉強会をしていると、1名がダントツで、3名がそこそこで、1名がビリになってしまいます。

 思い出してください。4名グループだと1名がダントツで2名がそこそこで、1名がビリという構図に当てはまります。それぞれ思い当たる節があるのではないでしょうか?

2:6:2の問題は、一斉指導最大の課題でありますが、ちょっと魔法をかけると全体を優秀グループに大変身させる事が出来るのです。

有名な進学校、進学塾等もこの魔法を知っているから毎年高い実績を誇る事が出来るのです。一過性のものではないのです。運が良いわけでもないのです。理由があるのです。
一斉指導には意識の集中により本来持っている以上の力の発動が可能なのです。支援者の誘導の仕方1つで個では発揮出来ない潜在能力を爆発させる事が出来ます。集団が勢いを持つと強烈な力となりえるのです。

社会認知性、協調性、互いに共同歩調を取る事にも抑制と制限をかける事が出来るのです。行動規範等明確なルール化を遵守出来る集団に変身させる事も出来るのです。仲良く、人に迷惑を掛けない、正しい行動がとれるように導く事も容易なのです。皆ができて1人が出来ないという事が許されない空気感と勢いは個別指導では得られない効果なのです。

縦割りと、モデリング、一斉指導の効用で激変する子ども達

 

ある施設の先生が、個別で指導する時間的な余裕があれば、自分でも出来る…のようなメールを頂いた事がありますが、指導者の力量や経験、実績は別にしても、少なくとも個別指導の優位性も適切なカリキュラムと教材がなければ成果は得られません。

遠隔地での指導も始まりましたので、もうじき特別支援学校や、公的施設に対して私共のダウンロード教材「えすぷり」の提供も出来るようになろうかと思います。実現すれば子ども達の成長を促す可能性が更に膨らむものと考えております。

多くの施設では人員の問題もあり個別指導は難しくとも、ご家庭では別です。子ども達と一緒にいる時間はご両親が一番多いのです。愛情をもってコツコツとお子様の力量に合わせて、誰とも比較せず指導する事が出来るのです。ご家庭でしっかりと個別支援が出来れば、施設との両立で子ども達の成長を促進させる事も夢ではありません。

実は私共COMPASS発達支援センターでは1対1を超えて、2対3等の特別体制での指導も行っており高い成果をあげております。指導方法は無限大なのです。

何をおいても子供達の状態に合わせて考察が一番大切です。指導者の都合や、施設の都合で捻じ曲げられてはならないのです。私達がお預かり出来る子ども達の定員数は10名です。10名の子ども達に対して、本来の指導者の人員配置は、加配を付けても通例4名までですが、COMPASSでは倍の指導者数を確保しております。本部では午前、午後と療育時間も分かれておりますが、指導者は常に8名以上の体制を確立しており、指導スペースも個別、少数、一斉の指導が出来る教場を確保しているからこそ出来る支援であり、獲得出来る成長が得られているとご理解下さい。