NO30.粘土の時代とは

NO30.粘土の時代とは

粘土の時代とはどのような事かとご質問が何通かございましたのでメールではなく記事としてお伝え致します。

陶芸を趣味にされている方であれば、ご理解頂きやすいと思うのですが、山から切り出した粘土は、水分を含み柔らかく整形しやすい状態であります。私が幼児期を粘土の時代と申しますのは、言語力も、思考力も、道徳観念も、身体能力においても非常に柔軟で進歩ささせやすい時期であるという事であります。

よい粘土も放置しておくと、水分が抜け、固く石のようになってしまいます。大きな塊になるとまるで岩そのものといってよい状態となります。子ども達の成長も同様で、放置しておくと柔軟性を失い、本来持っている力が発揮できなくなってしまいます。

自然の摂理の中で、使われない機能は退化してしまい、その機能そのものが喪失されてしまう事と同じなのです。本来持っている力も見守り等の手法で放置され続けると、子ども達が持っている力は退化し、機能を失ってしまいます。

脳内も使用しなければ健常であっても委縮が始まります。仕事を辞めた途端に認知症を発症される等の事例もありますが、高齢でも農業に取り組んだり、御商売等で現役でお店にでておられたりするのは好例だと思います。

機能を一度失うと復元する事は非常に困難な事となってしまいます。よほどの事がない限り、私の経験からでは回復させる事は非常に困難な事なのです。

骨折をした事がある方は、理解がたやすいと思います。私も右足の半月板を損傷し、大昔の治療法でしたので、2ヶ月半程足首から鼠蹊部までのフルギブスをつけていた事があります。

筋肉隆々の左足に比べ、ギブスを外した時は、やせ細り介助なしに歩行は非常に困難な物となりました。子ども達の頭の中も同じです。課題に取り組み、常に適切な刺激が与えれていた環境から、一転見守りだけで何も教育して頂けない状態が半月も続くとその子の能力は大きく後退してしまいます。

期間が長ければスタート段階に戻ってしまう事もあり、マイナスになってしまった事例も現認した事がございます。能力が大幅に低減するのです。獲得した言語を使わないと忘れてしまうのです。

昔学生時代に覚えた数式や構文や、単語をどれ程使いまわす事が出来るでしょうか?子ども達の頭の中もそれと同じなのです。使わなければ忘れます。使うように仕向けなけければ忘れてしまうのです。運動能力も同様ですし、ギターやピアノ等の楽器等でも同様です。

あるラインまでは戻るにしても能力は必ず減退してしまうのです。

練習を一日休むと自分に分かる。

二日休むと批評家に分かる。

三日休むと聴衆に分かる。

ポーランドの音楽家 ショパンの演奏では第一人者であったイグナツィ・パデレフスキの金言で、政治家としても活躍し、ワシントン駐在大使、外相、首相などを務めた方ですが、賢人の言う通り、療育も毎日の取り組みが大切であり、小学校就学前の粘土の時代にどれだけ取り組みを行うか、ご家庭でもどれだけの支援を行うかでその子の人生は激変します。

粘土の時代に鍛えられた子ども達は、更にその力を伸ばす事ができます。多くの情報や社会性をその大きな器で受け止める事が出来るからです。粘土の時代にどれ程の器にしあげるかが私達療育支援者にとって最も大切な課題であると考えております。

粘土の時代を放置すれば、石の時代へと徐々に移行します。石は固くて形を変える事はなかなかできません。本当に悲しい恐ろしい事なのです。そして石の時代が終焉し保護者の庇護がなくなると風化の時代へ入ってしまうと将来を危惧しております。

岩のように固く堅固だった物も、潤いを完全に失い、徐々に自然崩壊してしまいます。もう水を掛けてもやわらかくはなりません。泥団子になってしまい、器はつくれなくなってしまいます。

発達障がいのお子様の状態にもよりますが、言語の獲得をベクトルの軸と考えますと、小学校就学前から小学校2年から3年生までが粘土の時代と考えられ、小学校で辛い事が重なったりすると、一気に石のように心を閉ざしてしまい、言語獲得も非常に困難になってしまいます。言語を獲得しなくても生きていける術を得ているからなのです。悪い事としても叱られず、本来褒めるべき所でない場面で褒められ、周りが気遣い話す必要がなく、嫌な事は騒いだり、奇声をあげれば事たりるからなのです。

それも様々な援助の庇護があっての事で、その庇護がなくなると大変になる事は容易に想像できると思います。成人し毎晩飲み歩く、借金を重ね家庭が崩壊してしまう等という事例も少なくないのだそうです。

叱られた事が少なく、相手の気持ちも理解できず、自分中心に勝手な行動をとり徐々に孤立し、疎まれお酒や薬に頼ったり、精神的にさらにダメージを受けて自殺したりとそんな悲しい事が起こらないように、出来るだけ早期に援助する事が良策に思えます。

特性の状態で、成人に近づくにつれて社会ルールを理解し、就労支援等で社会に旅立たれている方は沢山おられ、支援されている皆様の御苦労も沢山耳にしており、支援者の一助になる事が私共の本分でございますので固い石の時代になる前に何とか取り組みを開始して頂きたいと思うばかりです。

諦めず、焦らず1つ1つ積み重ねて行けば、必ずそこに進歩と成長が見られます。そして現実から目をそむけず、悪い事は悪いと学ばせ、学習し理解する事を出来るだけ早くに伝える事でそれぞれの個性にあった器を作りだす事が出来るのです。

駄々をこねて、奇声をあげるお友達に飴を与えないで下さい。毅然とした態度で、本来の正しい道を示してあげて下さい。理解が不足しているのであれば、繰り返し言葉を教えて下さい。

口蓋に問題がないのであれば、どんな手段を使っても発話できるよに、取り組んで下さい。今日がだめでも、何かいでも取り組んで下さい。いろいろな手法を試して下さい。そして

一番効果のある方法を取り入れて下さい。

泣くのが煩いから、面倒だから、人に迷惑をかけるからと、子どもの意にそう事は止めて下さい。理解し本人の努力を引き出す事が出来るようあらゆる手段を講じて下さい。今理解出来れば、将来問題を起こす可能性はずっと少なくなります。

笑って語り合う事が出来るようになります。幼少期は粘土の時代です。諦めず頑張って下さい。

学齢が高くなってどうし接したらよいかわからない方は、無料療育相談をご利用下さい。

現在私共の施設では療育支援は出来ませんが、ご家庭での取り組み方接し方等お子様の状態に併せてお伝えし、場合によって他の支援施設をご案内させて頂きます。