NO151.ベクトルを下げて…(比較の禁止)

何らかの障がいが顕在化されてくると、あれも出来ない、これも無理、いったいどうしたら…という気持ちになってしまい、ご両親がパニックになってしまい、ともすると心の病になってしまわれるという事も決して少なくありません。

まずは落ち着く事、冷静になる事が何より大切です。現状を把握する事が最優先事項で、心配するのはずっと後であるとご理解下さい。パニックになっては、負けなのです。

パニックにならない一番簡単な方法は、お子様に対してのベクトルを一旦下げてしまう事です。※ここでいうベクトルは年齢に対して考えられる、お子様の発達度合を指します。

比較する事を止めるのです。

1歳ならここまで出来ないといけない。
2歳ならこれくらいは出来る様。
3歳だったら、こんな事もあんな事も…というような考え方は一旦横に置いて下さい。

こんな事を申し上げると諦めろと言うのか!?と叱られそうですがそうではありません。多くの場合、平均的な成長の度合いを示しており、あくまでも平均値のお話であるという事をご理解頂きたいのです。

同じ月齢(生まれ月)でも体の大きな子もいれば、小さなお友達もいらっしゃるのです。そんな事はわかっているという声が聞こえそうですが、成長の度合いだってやっぱり違うという事を思い出して頂きたいと思うのです。

学齢に間に合わないとどうしようと心配するものですが、通例成人し、大人になってからの事を冷静に考えてみて下さい。1年2年の違いがどれほどの差になるでしょうか?年を重ねれば重ねる程どうってことない問題とお感じになると思います。

〇歳だからこれが出来なければならないというのは、学校にいる間だけです。極端な事例ですが、嘗て一番最初に私共の組織の顧問弁護士をして頂いた先生は、極端な虚弱体質で、肺を含めた呼吸器も悪く、小学校も、中学も高校だって通われておりません。大学まで一切学校に行けなかった方でした。大学に入られたのも成人された後で、三十代だったと記憶しております。※十数年前に他界されており若干数字は曖昧です。※大学も休学等も重ねながら、司法試験に合格されたのは四十代で、お亡くなりになるまでの約十年間ご指導頂いておりました。

かなり突飛な事例ではありましたが、長い人生と視点を変えると、年齢や成長の違い等がさしたる問題ではないのではとご理解頂けるのではないかと考えます。周りと比較するからどうしようかと悩むのです。辛くなるのです。

比較する事を止める事ができれば、一歩前進です。

比較をしている間は、あれが出来ないどうしよう…となるのですが、止めてしまえば本質的な観察が出来るようになります。

次のステップは
良い事探しです。

出来る事を見つけるのです。
不思議な物で、括目すればあれも出来る。これも出来ると沢山出来る事が見つかります。
出来る事が把握出来れば、それに纏わる力をのばす事が可能であるという事も見えてきます。

出来る事を集約すると新たな力となります。力を結集すれば、また次の課題を克服する事が出来るのです。この繰り返しが大きな力、高い能力へ進歩して行く事となります。

出来ないという判断は、出来ない事を現認するだけの行為で止まってしまいがちで、多くの療育支援者が陥るトラップであると考えます。

コーチングの基本でもありますが、苦手な事を克服しようと注力するより、優れた一面をのばす方が成長するスピードも速く、場合によっては苦手な一面も凌駕出来る原動力となるのです。

出来ないという思いは、深層心理的にも行動制限をかけてしまい、出来ないという暗示を知らぬまに掛けてしまう場合もあります。

冷静に考えてみて下さい。出来ないと思いながらする事と、出来るかもと考えながら行って結果には雲泥の差がでてしまう事は、保護者の皆様であれば既に経験済みであると思います。

出来ないを繰り返せば繰り返す程、力は減衰します。頑張る心が保護者も子ども達も萎えてしまうのです。あれが出来るので、これも出来るかもと考える作業には勢いがでます。期待値も膨らみます。いくらやっても駄目というのと、これだけやれば出来るだろうという思いとでは導き出せる結果が異なるのです。

まずは比較を止めて下さい。
出来る事を探して下さい。
出来る事から予測される可能性を模索して下さい。
後はお子様とご自身の力を信じて頑張るだけでかつてない成果が得られるようになるのです。

3歳で出来なかった事も4歳、5歳で出来るようになった段階で、突然成長が促進される事例は幾らでもあるのです。

5歳まで全然駄目と思われたお友達が、正しい導きで劇的に進歩成長する姿を今までにも沢山ご紹介したと思います。それらは決して特別な事例ではありません。多くの場合皆様も獲得出来る成長なのです。※関係記事 「2ヶ月で1年を取り戻す」 /「進歩と成長報告(その後の成長)」

例えば、小学校6年生であるが、学業レベルは小学校1年生程度というお友達がいると仮定します。出来ない事を現認してしまい、正しい療育支援を怠れば、学齢が上がっても学習レベルはそのままの可能性が高くなってしまいますが、5年少々の期間で1年生の事が理解できると判断すれば、最低でも10年で2年生レベルに到達する事が可能であると判断できます。

実際に成長は加速度がつきますので、成長し続ける限り正しい支援を行えば支援期間も短くなります。多くの場合それまで正しい導き方をされてきたとも限らず、ともすれば数か月で字学年の目標を達成する事も出来ます。このようなスタンスで取り組めば、中学生、高校生になるまでにかなりの能力を獲得できるようになり、社会性も養い、進学就業する事も夢ではなくなるのです。

年齢、学齢という時間に拘束されるのを止めればかなりの成長が見込める事が多々あります。自立して生活する事も、不可能ではないのです。二十歳で成人式ですが、二十五でも三十でも成人しても、その後の人生を謳歌する事が可能であると考える事が出来れば時間に拘束される事をお止めになり、ベクトルを下げる事が出来れば見えてくる物が沢山あるとご理解下さい。

時間や年齢で縛るのを止め達観出来た時、ありのままの姿を受け入れた瞬間から本質的に取り組むべき目標が見えて来ます。

焦らないでとよく申し上げますが、比較を止めれば焦る気持ちも無くなります。焦らないといういう事と、諦めるという事は同意語ではありませんのでくれぐれもご注意下さい。

沢山ご相談のご連絡を頂いておりますが、7歳なので10歳になったのでもう遅いでしょうか?というご相談もありますが、早いにこした事はありませんが、まだまだ全然大丈夫であるとお考え下さい。

人間の能力はまだ未知数です。医学的にも科学的にも解明されていない事は山積しております。人の平均はあくまで第3者の平均値です。お子様は特別なのです。特別な存在ですので、平均はそもそも当てはまりません。稀代の偉人の多くは特別です。発明王と名高いエジソン等そのさいたる存在だとご理解下さい。

特別ですので、一般の常識は当てはまらない成長過程を遂げる事となるのです。お子様を信じて、比較を止め、出来る事を評価しながらしっかりと日々取り組んで下さい。お気持ちを陽転させて下さい。保護者が変われば、お子様も変化出来るのです。