NO181.伝える大切さ

「そんな事をしちゃ駄目よ~。」とよく耳にする言葉ではありますが、一部のお友達にとっては、何が駄目なのかわからないまま、言われた声の大きさ声音(こわね)や、言った人の表情で行動を止めているだけで本質的に何が悪いのか理解できていな場面が沢山あると考えております。

意味が伝わってないのです。

何が悪いのかわかってないのです。

とりあえず止めただけなのです。

だからまた繰り返しているのでは…と考える事が出来ると推理できます。だって何が悪いかわかっていないので、何度も何度もしてしまうのです。

何がどう悪いのか理解させない限り制止させる事は出来ないのです。例えば、ご家庭で何か頑張った時、抱きしめたり、頬にキスしたりする事は少なくないと思います。これがその子のご褒美としてとらえていた場合、そのお友達は何らためらいもなく、頑張ったお友達を抱きしめたり、キスしたりしてしまいますが、そこで「駄目」と言っても何が悪いのかわからないのです。だっていつもと一緒なのに、お父さんや、お母さんがしてくれている事と同じ事をしただけなのに何故怒られるの?????
何で駄目なの???

何が悪いの??

どうしたらいいの?

そこで、もっと単純な事からしっかりと善悪判断の指針になる善悪スケールが必要となります。下の写真は一例ですが、ちょとした事もわかりやすく支援する事が可能となり、徐々に自己判断が出来るようになってきます。

また心で思っている事とは逆の発言、行為にでるお友達もいます。例えば、絵本を読む?と聞かれて、本当はとても読みたいのに、「いらない」と言ってしまう事があります。
好きな先生ともっと一緒にいたいのに、「帰る…」と言ってしまい、その後何故そんな事を言ったのかくよくよ悩み、自己嫌悪に陥り、更に心の傷を深めてしまう事も少なくないのです。私達大人でも悪い事をしたな…と思っていても謝れない事は一杯あると思います。子ども達の心の中はもっともっと複雑なのです。

心の中で思っている事と、行動が常に同じとは限らない事も知っておいて頂きたいと思います。

そんな時、ちょっとした一押しが必要なのです。

その魔法の言葉は、

「本当は、〇〇したいんだよね。先生が一緒にいってあげようか?」

「ではご一緒に…」

本質的に悪い子はいません。なんでこの子はこんなひどい事をいうのでしょうか?私の育て方がわるかったから…というようなご相談を頂く事も少なくありませんが、多くの場合は躾の問題等ではないのです。制御できないだけなのです。

そして理解の根底には言語習得が大切な鍵であるとご理解頂きたいと思います。

世の中には、療育支援に関わりながら、能力の開発等一切必要ない、ありのままを受け入れる事が大切と提唱されている方もおられるようですが、全くのナンセンスです。

10年後、20年後、30年後、ご本人が成長し、ご両親は高齢となり力関係が逆転し、それでも意思疎通出来ないままで果たしてご本人もご両親も幸せな人生を送る事が出来るのでしょうか?

ご両親が他界してしまった後は果たしてどうなるのでしょうか?

ご本人のご兄弟がその後のご面倒をみられるのでしょうか?

私達は教育支援を行うボランティアとして昭和61年から活動を行っておりますが、当初一番多かったのは不登校と家庭内暴力です。意思疎通が出来ない子どもが、ご家庭で暴れまわり、バットで殴って壁は穴だらけ、布団は切り刻まれ、お母さんは顔に青あざ…警察も介入できず、ある家庭では自殺未遂、またある家庭では家族がバラバラになり家庭崩壊、ある家庭では結果精神病院に強制入院…何が悪いのかわからないのです。何が問題か理解しえない結果です。

上記の「ありのままに受け入れろ」という方はこんな現実から目をそむけているか知らないのだと思います。

私達はそんな悲惨な結果にならないように、如何に自立できるか、如何に生きるすべを体得するか、どうやって社会適合できるのか、どうすれば就労し自立出来る道が歩めるのかに視点を置いて30年に渡り活動を続けて参りました。

言葉を理解し、意味を知り、知識を得、少しでも社会適合できるように支援する事が幼児期から学齢期にかけての最大課題であると考えます。勉強をさせると家族関係が壊れる????という事ですが、何も理解しえない状態の方が全てを奪ってしまうと考えます。

悪いという意味がすぐに理解しえないのであれば、細かくその行為を分別して1つ1つ理解させれば言葉を発する事が出来なくても社会認知性を得る事は出来るのです。

子ども達の学ぶチャンスを潰す事が一番の大罪であると考えます。

子ども達の状況は書籍に書いてあるような一元的な状態ではありません。平均的な一例であり全てではないのです。十人十色、100人いれば100通りの支援方法があるので、どうぞ諦めずに、お子様の状態にあった支援方法を模索し日々実践して頂きたいと願っております。

生きている事すら、現象として把握できていても、小さな虫1つ行きかえらせる技術は存在しないのです。脳科学も解明されたといっても推論の域を出ていません。自閉症もどこまでが自閉症なのか判然としていないのです。わかっていないのが紛れもない事実です。現象をとらえているだけであるとご理解下さい。

手を拱いていては何も解決できないのです。

お子様の未来を切り開くのはご両親の熱意と継続的な支援が大切であるとご理解下さい。