NO219.見えてる物が違うのです。

フィルターの種類が違うのです。


自閉傾向の強いお友達にとって、見えている物と聞こえるという普通の事にでも大きな差異があるという事を理解頂きたいと思います。

私達は物を見るときに1秒の間に4カ所から5カ所網膜に見えた物を写し取り、それを脳の中で補完して視界を確保します。通例180度といわれていますが、180度全部がみえているのではなく、脳内で必要な情報を整理統合して描き出していると考えられています。

データーとしては1秒に見とる情報量は莫大な情報量を頭の中に取り込んでいるとお考え下さい。そして取り込んだ情報から欠落があるのが人の顔の表情ではないかと推測しています。見えているのに、見えていないのです。

YouTube等でも自閉症の子ども達が見ている世界が公開されていますので一度ご覧になって下さい。

私見ではありますが、人の顔が見えてなかったり、人の存在を脳内で補完してなかったりといった、視野の欠落により、本来あるべき物を認知出来ていないのではないかと推測する事ができます。

視覚もコントロールできるのです。


視覚認知の訓練は、他にも様々な取組みを私達COMPASSでも実践しておりますが、その中でも、ご家庭で出来る最も簡単な指導方法をご紹介いたします。

特別な準備もいらず、いつでもどこでも簡単に取り組む事が可能な、1点凝視法という指導手法をご紹介いたしましょう。簡単に出来るのですぐにでも挑戦してみて下さい。


写真のように親指を立てて凝視するのです。指示が入りますので、ある程度こちらが促している言葉の意味を解する事が出来ないと簡単に取組みできませんが、ある程度の理解を示す事が出来るお友達であれば、この指導は容易で効果的です。※指の代わりに「ろうそくの炎」で代用する方法もあります。


同時に集中力も養う事も出来て、この取組みは一挙両得です。注意欠陥のお友達にも有効な指導手法です。

※余談ですが、この取組みをおこない、親指に集中すれば、周りがぼけて見える事に気付きますが、これこそ私達の目は全体を見ているようで、見えていない証拠です。沢山の写真をはりつけて、全体を構成しているという事です。

1点を凝視する事がある程度出来るようになれば、今度は写真を見つめます。最初は人数の少ない物から初めて、徐々に人数をあげ、クラス写真に移行します。拡大して見せてあげるのも有効ですし、知らない人よりも多くの場合は関わりのある人の写真やお友達自身が写っている物が望ましいと思います。

写真を見ながら、ディテールを尋ねるのも有効な手段です。見える物、見えている物を一緒に確認して下さい。

ここから先は個人差がありますので今回これ以上の説明は避けますが、見える世界が変われば、子ども達の態度も行動も全て変わります。

見えているのに見えてない。


見えていて見えてない、見えているはずなのに、つい気になる物を除外指定しまう事も練習で改善させる事が出来るのです。

除外されたものを見ようとする事を掴み取れば、もっと社会適合性が向上してきます。

老眼になって、細かな報告書を見るのが嫌な人、テーブルの上や部屋のゴミが目に入らない人、お風呂掃除をしようして初めて浴室のカビや汚れが目に入る…普段見慣れている物も私達の脳の中で補完されている映像ですから、実際に見ているつもりになっていたという事例は山のようにあります。

他にも大掃除をはじめて、細かな汚れが目につく、畑で雑草を取る時、最初は小さな物は目に入りません。大きな雑草だけですが、とればとるほど本当の量に驚くものです。

私達も普段の生活の中で見えていないものは山のようにあるのです。埃も雑然と積み重ねられた本やCDも見えているけど、見てないのです。

以前アメリカのTVで主人公が何かしている後ろで、別なアクションを行った実験がありましたが後ろの動きに気付いてなかったという報告事例もあります。クラスの中で大好きな人しか目に入らないと言えばご理解頂き易いと思います。

注視する力、見極める力を獲得する事が能力の向上に繋がります。注意を向ける事により人の目をみて話す事も出来るようになるのです。

注視させる方法はそれぞれお友達の様子をしっかりと観察した上で行う事が大切です。

この指導も焦らず時間をかけて行って下さい。
何よりも繰り返しが大切です。

個人の資質により取組み方も異なり、指導方法は多岐に渡りますので、わからない時はご相談においでて下さい。