NO270.集中の原理(大改定)
NO270.求める物を見極める(改訂版)
保護者心得 【言語】 【ダウン症】 【自閉】 【LD】 【多動】 【注意欠陥】
本記事は、関係各所から、本文のままでは誤解を招くとのご指導を頂きました。お伝えしたい趣旨を分かり易くする為、大改訂を実施致しました。ご再読頂ければ幸甚に存じます。
療育施設を選ぶのはどんな理由でお選びになるでしょう。
施設が綺麗だから?
送迎があるからでしょうか?
お友達が一緒だから?
沢山子ども達が通っているから?
運動があるから?
リトミックがあるから?
子どもの成長が期待できるから?
何を求めて施設を利用されるのか、利用の目的はご家庭の事情によって異なります。
今までは遠隔地か、医療型の施設との併用か、遠隔地の為に、地元の施設との併用が主な理由でありましたが、最近「1箇所だけだと心配だから…」というような理由で3カ所から多い方で4カ所の施設を併用されている事例が見受けられるようになり、子ども達に混乱を招く結果となっており大変危惧しております。
出来るだけ集中的に課題に取り組みたいのですが、様々なタイプの支援をうけられているせいで、課題の定着率が一応に低く、接し方もそれぞれの施設で異なるために、一部のお友達ではありますが様々な混乱が起こるようになりました。
例えば、せっかく「おはようございます。」と言えるようになったお友達が、「おっす」と言ってみたり、きちんと「はい」と言えるようになったお友達が、「ん」しか言わなくなったりしています。
数字も簡単にお考えですが、「いち、にい、さん、しい…」と覚えていたのが、不用意に「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ…」という言い方で指導を受けわからなくなったりしています。
数助詞をいきなり教えられ、数称力が減退し、酷い場合は計数も出来なくなったりと、様々な混乱が起こっています。
送迎ルートも毎日違うので、落ち着きをなくしてしまったり、お昼寝の対応もまちまちで、体調を壊す等の問題にまで発展しております。
人見知りのお友達の場合は、毎日出迎える先生が違うので、せっかく目が合うようになったものが、1週間後には、もとにもどってしまったり、静かに着座できていたお友達が、座位が崩れてしまったりと私共も対応に頭を抱えております。
習い事に例えてご説明させて頂くとすれば、運動を習いたいなら体操教室に通うべきで、運動能力を獲得したいのに、茶道や、音楽や、算盤をしても成果は遠のくのばかりです。
音楽の素養を身に付けたいのに、スイミングをしても直接的な成果はあがりにくいと考えます。
私見ではありますが、一流の体操選手は体操に特化しているのでああって、他の事が何でも上手いわけではありません。
文字を習いたいのに、サッカーでは方向性があっていないと感じます。
心配だから…と言われている方の多くの方は、支援に際しての考え方に一貫性がなく、いい事だから…と何でもとりいれたいのかもしれませんが、多くの場合は、大切な時間を無為にされるばかりではなく、徒労に終わられてしまわれており、理想と現実の落差を感じ、いたたまれない気持ちで一杯です。
野菜を買いたいのに、肉屋さんに行っても手に入りません。食事を作るのに、八百屋さんに行ったり、魚屋さんに行ったり、お肉屋さんに寄るというのはわからないわけではありませんが、今野菜が必要なのであれば、八百屋さんに行くべきなのではないでしょうか。
大工仕事をお願いするのは、大工さんで、魚屋さんに頼んでも希望は叶いません。
集中の原理から外れると、あと一息、力を尽くす事が出来にくくなってしまいます。もう少し、定着するまであと少し頑張れば、目標に到達するのに、途中で止めてしまうと願いは叶いにくくなります。
子ども達は、坂道を一生懸命に登っていると考えます。歩みを止めるとその場に留まれず、下に下へとずり落ちてしまいます。もう少しで頂上に手が届くのに、歩みを止めたため気が付いたら、スタートラインに押し戻されてしまう…
人は同じことを繰り返すのは誰しも苦手と考えます。最初は努力と周りの応援で、伸ばす事が出来ても、何度も元に押し戻されてしまうと、徐々に苦行となり、ともすると嫌いになったり、強いストレスと劣等感や挫折感を負ってしまうと思います。
困難を克服するためには、集中した取組みが何より必要です。
達人と言われている人の多くが平均1万時間を費やしていると言われた方がおられますが、これは過言ではないと感じます。私は僅か30年の支援経験しかありませんが、多くの成長は多大な時間を費やした結果ではないかと信じています。
あれもこれもと学ぶには、子ども達には時間が足りないのです。
保護者の皆様には、本質的な物事のとらえ方をお願いしたいと切に願います。バランスも大切なのですが、方向性を含め、端的に投網をかければ良いいう考えを思い返して頂ければと思います。
子ども達は様々な課題を抱えています。
通例多くの子ども達が簡単に体得できる事でさえ、時に多大な時間を要します。
発達障がいのお友達には、通例では計り知れない忍耐力と精神力が必要なのです。
苦手な問題を克服するのは大変な事なのです。
大変な事が多い中、あれも、これもと集中する事が出来ず、どうやって必要な能力を体得する事が出来るのでしょう。
私は嘗て中学柔道全日本選手権2連覇したお友達を指導した事がありますが、あけてもくれても、柔道ばかりしていました。保護者の方がさせていたという方が正しいかとも思います。
柔道の為に役に立つ事を、人一倍の努力を積み重ね、毎日泣くほど練習をして獲得した成果でした。
尋常ならぬ集中力で、小学校、中学校、高校の多感な時期を全て柔道に捧げて手に入れた人生でした。
言語を習得したいののであれば言語に集中する必要性があるのではないでしょうか。
社会性が必要であれば、社会性獲得に繋がる支援に集中する必要性があると信じます。
どうか必要な支援に、必要な指導に集中して下さい。
余分な事に惑わされてしまうと、必要な事を身に付ける時間がなくなってしまうのです。
大切な事に集中させてあげて下さい。
子ども達の限られた時間を集中的に使わなければ得られる成果が僅かしか残らないのです。
以前、時間の問題に触れた事がありますが、子ども達の時間は有限でありません。10教えて10伸びる時期は15歳前後までではないかと体験的に考えます。
残念ですが、学齢が上がれば上がるほど、10教えも、その成果が5になり、3になりやがて1に満たなくなってしまいます。膨大な時間と労力が必要になってしまいます。
一番伸びる時に集中させてあげて下さい。
成長を獲得するには「集中の原理」を活用するほかありません。
二兎追う者は一頭も得ずにならぬよう、何が必要で、今何をするべきかお考え下さい。
前出にもございましたが、それぞれ施設には施設内ルールがあり、声掛けの仕方も、対応の仕方も、支援方法も全て異なります。お迎えのルール、送迎の道順も全て異なり、繊細なお友達にとっては、私達が感じる以上に大きなストレスに繋がっているケースも決して少なくありません。
丁寧語で話す所もあれば、方言全開で話す施設もあります。
指導者ともお友達感覚で接する施設もあれば、厳格なルールで対応している施設もあります。子ども達にとっては大きな負担で、そのルールの違いに戸惑うばかりなのです。
どうして良いかわからなくなり、折角の成長も低減したり、退行し、2次障がいに発展ケースも考えられます。
1ヶ月に1回や2回であれば、先生の顔すら覚えられないお友達もおられ、その都度、全て最初からやり直しとなってしまいます。
もう一度何をさせたいのか、何を得たいのか、何を希望されているのか良く考えてお決め頂きたいと願っております。
私は発展途上国の学校や幼稚園を訪問した事がありますが、学ぶ時間も惜しんで、子ども達はそれぞれ出来る仕事をしています。余暇等ないのです。あれもこれもする余裕はありません。でも、その中で僅かな時間を惜しんで努力を重ねた者が才を得ていたのは厳然たる事実です。
何をなすべきかの本質が見えれば、集中する事が可能ですが、子ども達に選択をする力は勿論ありません。慎重に何をなすべきかお考え下さい。何が今お友達に必要なのかもう一度将来を睨んでお考え頂きたいと思います。
発達障がいの問題を抱えているお友達は、まず生きる力を学ぶ事が大切であると信じております。それこそがお友達にとって必要な本質であると考えます。
どうぞ体得すべき事に集中して下さい。
本質的に成長をもとめるのであれば、求める事柄に集中させて下さい。