NO42.取組みの違いを知る

施設ごとの取組みの違いを知る

遠方からの療育相談も増える中、特に感じるのは、何か月も通っているが、何も変化がないというようなご相談が非常に多く、保護者の方が期待されていた支援と実際に通所されている療育施設の支援内容の誤差を相談に来られる事案が非常に多く、今回は療育支援のスタイルの違いを知る事をお伝えしたいと思います。

つまり通所をお考えになっている施設は、どのような療育スタイルで、何を目指しておられる施設に通われているか正確に理解する必要があるという事です。

幾つか施設を周られるとお気付きになると思いますが、一言で療育支援といってもそのスタイルは様々です。支援出来る内容も、取り組み方も、スタッフ構成も異なる為、支援出来る内容もサービスも同じではありません。

ご相談に来られる方にいつもお伝えしておりますのは、お子様をお願いする施設の提供内容は初めから決まっており、選び、契約を結んだのは保護者の自己責任である事を、お伝えするようにしております。支援の内容をよく確認して下さい。多くの場合保護者の皆様の勘違い、思い込みから生じた疑義である事をお伝えさせて頂いております。

それぞれの施設は、支援出来る内容も、それぞれ独自の療育方針と、子ども達の特性に対しての見解も支援方法も、スタッフの技術水準もキャリアも資格も全く異なります。

レスパイトを中心に考えておられる施設では、子ども達を預かる事で、保護者の方に休憩、休息して頂く事が第1目的となっておられますので、指導をするというよりはお預かりをするという託児的な要素が強くなられていると思います。まず保護者に余裕を持って頂くための施設であるという事をご理解頂きたいと思います。指導スタッフに求められる技術も自ずと異なります。

よくご相談にこられた方から、「いくら質問をしても答えてくれない、」というのは、残念ながら専門外でご存じないからであると思われます。脳外科の先生に耳鼻咽喉科の質問をされてもアバウトな返答しか返って来ないのと同じです。多くの場合は、サービスが悪いのではなく、専門性の違いであるとご理解頂ければ誤解が解けるのではないかと思います。

でも、「子ども達の資質を伸ばす為に、絵画指導があったり、リトミックや運動が在ったり、能力を伸ばす取り組みをすると説明があったのですが、一応あるけど効果が…」と言われるケースも多いのですが、一部の先生は本物であると存じておりますが、子ども達の支援の為に、専門でなくても、見よう見まねで取り組んでいる事も沢山あるように伝え聞いております。大学院等で、専門的な技術を修め、子ども達に接している方は非常に少ないのが現実です。

教育原理等、指導に関わる基本的な知識をお持ちか、児童心理学等の知識があるのか、何を狙っての指導であるのか、時間つぶしなのか、「その指導の目的は何か」が明確ではなく、アバウトな視点で取り組みがなされている事も少なくないようです。逆に、詳細に状態管理を行いご指導されている施設もあり、一口に○○の指導をしているといっても、指導方法も、指導技術も異なるので、子ども達が得られる成果も異なってしまうという事をご理解頂きたいと思います。

どのレベルで指導をされているのか、どのレベルを目指しているのか、どのようなカリキュラムで能力の獲得を考えているのか、日々の取り組みで何を目的としての支援であるか担当の先生にお尋ねになれば簡単に判断頂ける事であると思います。

美大で絵画の勉強をしていても、心理学的対応や声掛けが欠けていたり、技術レベルが高過ぎて、子どもの実力にフィットしていなければ、効果が出にくくなってしまうという事もあるとご理解下さい。

そして重要なのは、指導して頂く方の資質です。実社会に出ればよく理解出来ると思うのですが、「○○大学卒です。」と有名大学を名乗っていっても全く役に立たないような事は山ほどあると思います。

お子様の様子に気付いてくれるのか、どれ程の配慮があるのか、これはその先生の人間力に関わるという事も沢山あるとご理解下さい。知識も必要ですが、その知識をお子様の特性に合わせて対応頂けるような、素地があるのかでもその成果は全く異なるという事を理解頂きたいと思います。

「○○をします、△△もします。□□もあります。」と見学の際にご説明頂ける事と思いますが、○○をして何を目指すのか、どのような方法で取り組むのか、どのような進歩を遂げる可能性があるのかをお伺いになれば、その意味を理解する事が出来ると思います。

例えるなら、保護者の方が目指す所は、大学入試が目的なのに、高校入試までの指導技術しかない補習塾では対応が出来ないのと同じです。通例、大学入試は予備校に通うべきで、地域の補習塾等では対応出来ません。中学入試をするのに、珠算教室に通っても、ピアノの習ってもどうしようもありません。必要に応じた支援の提供が大切なのです。うどん屋に入って、ステーキを注文するようなものです。

見守り支援であれば、何か課題をこなすというよりも、怪我をせず楽しく過ごす事に力点を置いておられる施設が沢山あるように感じておりますが、その場合、お子様の興味がある事に集中させるように配慮されますから、これも通っているからといって、言語が習得出来た等というような進歩を見る事は非常に稀な事となります。言葉を覚えさせたいのに、積み木で遊んでいてはなかなか結果が伴わないという事です。

見守り型ですので、好きなDVDをずっと見せ続けるというような事もあるでしょうし、孤立しがちなお友達にとって、他のお友達となんとか楽しく遊ぶ事を目指しての取り組みをめざされるかもしれませんが、コミュニケーション能力が獲得出来ない限り非常に難しい課題になると言わざるをえません。

好きな事を中心にさせて頂けますので、節度がどれほど保てるのかも施設の基本方針と、指導者の技量に係って参ります。泣かさない事に重点をおいているのか、とりあえず迷惑が係らなければ何でも良いとされている施設か、行儀に厳しいのか、挨拶出来なくても静かに入室出来ればそれで良いのかも施設の基本理念によって対応が異なります。

例えば、レディネス状態が整っておらず、トイレが自分で出来ないお友達に、トイレ指導をさせて、少しでも自立を促す事を中心にされているケースもありますし、オムツをして出来るだけ手がかからないように見守っておられるケースもあり、保護者の皆様も、クレームを言われる前に、何を獲得しに通所を始めたか、もう一度しっかりとお考え頂きたいと思うばかりです。

私共の施設でたとえれば、言語の専門家に、トイレ指導をお願いすると、意味理解からスタートし、実際のトレーニングは、保育担当にお願いするような事となり、オールラウンドに指導出来る職員もおりますが、それはどこの施設でも一部の熟達者であり、通例で考えれば、得意不得意があるという事もご理解頂きたいと思います。

この続きはその2へ続きます。