NO46.運営の特性 餅は餅屋 その5

運営の特性 餅は餅屋 その5

心配のあまり、体調をくずされたり、心がくじけそうになったりして、お子様と正面から対峙できないような場合もあります。このような場合、まずレスパイトを中心とされる施設や、暴れるお子様の支援をしっかりと見守って頂ける施設にお願いし、まずは、ご家庭の体制や、心身の健康を取り戻す事に力点を置かれる事が大切であると言明致します。

保護者がまず元気にならなければ、何も解決しません。保護者が倒れたら、子ども達も一緒に倒れるしかないのです。助けて頂く事が何よりも賢明な判断です。子育てに取り組める気持ちを奮い立たせる事が大切なのです。お子様を預かって頂いている間に、鋭気を養い、掃除をし、洗濯等の家事をこなし、綺麗にお化粧できるような精神的な余裕をもって、しっかりとお子様と向き合う事が出来るような気持ちと環境を建て直してお子様の問題に立ち向かう事が大切なのです。

あるべき姿を取り戻されてから、今度はどのように取り組むべきかしっかりとお子様の療育計画を勘案し、お子様の様子にあった、ご両親の希望にあった療育支援がなされている施設にご指導をお願いする事が賢明ではないかと考えます。

子ども達の療育支援は、家を建てるような分業の集積の産物とよく似ています。基礎を作り、棟上げをして、屋根をふき、壁を塗って、内装に取り掛かる、建具を入れたり途中で電気工事もあれば、ガスや水道の工事だってあります。家作りは、様々なプロが分業し、力を合わせて作り上げた物なのです。

療育も分業的な側面があると考えます。大きな施設であれば、それらを全てホールインワンでご支援頂ける施設もありますし、熟達した先生も沢山いらっしゃいます。小さな施設であれば、オールラウンドに対応される所もありますが、多くの場合は、それぞれ得意な専門分野があるのです。その専門分野をよく理解して頂きたいのです。よく理解して頂ければ出来る出来ないの問題は起こりえないのです。通われたい施設の特徴をよく把握して頂きたいのです。

電気工事をお願いしたのに、大工さんでは対応できません。餅は餅屋なのです。電機工事は電気屋さんにお願いしなければ問題は解決できないのです。どの施設にも素晴らしい先生が沢山いらっしゃいますが、目指す方向性があっていなければ、望む結果は得られないのです。眼科に行って、体調が悪いと訴えても内科や外科のようにMRIもなければ、CTだってないのです。それで文句を並べるのはお門違いであるとご理解下さい。

話を戻しますが、連日通所の意味は、連続した継続的支援による効果を目的と考える場合と、保護者に指導能力や気力、体力がなく、ご家庭での定期的な指導が困難であり、その代わりに支援させて頂くという事が、本本来改善を求める療育手法の基本スタンスではないかと考えております。

私達 コンパス発達支援センターでは、連日療育に関しては、上記の基本スタンスを持って子ども達の療育支援に取り組んでおり、お子様の状態だけではなく、ご家庭の事情をよくお伺いさせて頂き、指導日数を決定しております事をご理解下さい。

30名以上通所されている大型の施設と、定員10名程の施設の差はいったいなんでしょう。施設規模が異なりますが、レスパイトや見守り支援を希望される場合においては、特段の差異はないと思います。

大型の施設の場合は、まず環境に恵まれているという点が一番のポイントであると思います。広い園舎、広い運動場、場合によっては小型の体育館を有している施設もあり本当にうらやましい限りです。また人員配置の関係で、指導員が多く、熟達した職員を多く雇用する事が可能であります。大型の送迎バスがあったりと施設設備そして、多くの人員を配しておられ、給食等も充実されておられ何ともうらやましい限りの環境です。

嘗て、私も複数の海外日本人幼稚園の園長の任についておりましたので良くわかりますが、施設が大きくなり、沢山の園児を預かる事になりますと、少人数の園児に対しての教育を行う場合であれば、園児それぞれの力量を考えて指導する事が可能ですが、大人数の園児をお預かりするようになりますと、園児全体の力量に合わせた平均的な取り組みが必要となり、個別のニーズにお応えしずらくなってしまいます。

大人数での指導では、平均的な、全体のレベルに合わせた指導が必要不可欠となって参ります。学校等の指導でよく言われますが、トップに合わせるのか、中位層にあわせるのか、下位層に合わせて指導を行うのかでも得られる結果は異なります。

クラス運営を考えれば、一番人数の多いレベルでの指導を余儀なくされるのが全体指導の限界です。トップに合わせるのであれば、特別クラスをつくらなければトップ層は満足しませんし、下位層は上位中位層に合わせると理解する事が困難となるのは体験的にご理解頂ける事であると思います。通例の園活動でもこのような問題を抱える事となりますので、療育支援になればなおさらレベルの設定が非常に難しいものとなります。

私は29年に渡って3000名を超える沢山の子ども達と直接向き合って参りましたが、個々の問題を克服する最も効果的な指導方法や、教材は生徒毎に事なり、力の並列化が成立するまで最も効果的な指導法は、個別指導であると断言致します。

私共が個別連日療育を実施しているのはその為で、力が一定せず、個々の獲得するべき課題が一定でない場合最も効果的な指導法を実施しているとご理解頂ければと思います。個別指導では、その子の為に課題を準備し、その子の為の課題や訓練事項を丁寧に、その子のレベルに合わせて指導する事が出来るのは個別の優位性であり、高い効果を現認する事が出来ます。

但し個別指導だけでは競争力や、スピード、共に頑張ろうとする気持ちを育む事は出来ません。力の並列化が可能になった段階では、一斉指導(集団指導)が有効で、園児の力、クラスの実力が一定のレベルに達する事が出来た場合は、互いに競い合う事で、化学変化を起こす事が出来ます。一緒に課題に取り組む友人の存在はとても大切なものとなりますが、意思疎通すら出来ない状態であれば、この理論は成立致しません。一斉授業の優位性を実感するには、クラスの子ども達がある一定ラインにそろい、自力で取り組むべき力が養え、向上心という本来の価値観を満たす事が出来た場合に限られます。

進学校に進むために、入試が存在しているのはこの為です。教えるのが楽だからではありません。一定レベルの生徒でクラス運営をする事で、より高い競争力や達成欲求を獲得する事が出来るようになるからです。逆にいうと、レベルが整ってなければ、指導レベルに合わない子供はついてこれません。

療育支援において、子ども達の特性が均一でありませんから、クラス全員のレベルを整えるのは大変難しい事となります。バラバラのレベルでの支援になると、どうしても指導スタッフの人数が必要になるのです。大型施設において指導員が1人でクラス運営出来るようになるには、子ども達に指示が簡単に通るまで、レベルを引き上げなければその運営は大変危うい物となると考えております。

言語が苦手なお友達で、意味一致もできず、発語も難しい子ども達に指示を通すのは非常に困難で、常に混乱をきたします。言葉が通じてないので、ルール認識もできず、体験的な日々の習慣から、「椅子にすわるのかな?」「おこられるかな。」「こうすると褒められるかな。」と推理し、本質的に理解をして動くのではなく

習慣として動く事が出来るようになるため、一歩外に出た時に、対応出来る事と、出来ない事が出て参ります。でも本質的いその子の能力を開花させるためには、お友達とのクラス活動では大変難しい事であるという事をご理解下さい。

施設の規模により、出来る事と出来ない事が違うという事をしっかり認識して下さい。それぞれ得意分野が違うのです。

その6へつづく